施設データ 2017年

部門紹介

外科 

当センターでは、外科専門医/消化器外科専門医を有する救急科専門医(=Acute Care Surgeon)がAcute Care Surgery部門を担当しています。Acute Care Surgeryとは、米国外傷学会が2005年に提唱した、「外傷外科」「救急外科」「外科的集中治療」の3つの基本領域の診療が提供できる新たな診療概念で、従来の外科医、救急医、集中治療医が担っていた領域から独立した1つの専門診療科となるもので、今後重要な診療部門となると考えられています。Acute Care Surgeryの対象となる疾患としては外傷性胸部/腹部臓器損傷などの重症外傷と、急性虫垂炎・胆嚢炎・消化管穿孔・腸管虚血/壊死・上腸間膜動脈閉塞症などの急性腹症があります。

外傷外科

 当センターでは、交通事故や高所からの墜落などによる高エネルギー外傷症例を多く診療しています。我々Acute Care Surgeonは、体幹部外傷に対する診断・根治的治療だけではなく、多発外傷症例に対する治療の優先順位決定(Decision making)を含むManagementを担当します。体幹部外傷に対しては、Damage Control Resuscitation/ Damage Control Surgeryの概念のもと、受傷直後から生じる外傷性凝固障害の制御のため早期よりトラネキサム酸・輸血用製剤を開始し、迅速な開胸/開腹ならびに経カテーテル的動脈塞栓術(TAE)による止血術を行っています。2017年からは、出血性ショックが疑われる重症外傷症例に対して “コード・トラウマ”の運用を開始しました。 “コード・トラウマ”は、救急隊からの病院前情報をもとに発動され、搬入前段階で医師・看護師・放射線技師・検査技師・薬剤師など多職種が参集、情報共有するとともに開胸/開腹手術および経カテーテル動脈塞栓術(TAE)の必要物品と緊急輸血製剤を血管造影室にスタンバイし搬入に備えます。救急外来から手術室、手術室から血管造影室などの移動時間を短縮するため、“コード・トラウマ”発動症例では血管造影室に直接搬入し、緊急開胸/開腹術とカテーテル的動脈塞栓術の両方がシームレスに行える体制を整えています。

また、コード・トラウマのシミュレーションや救命できなかった症例を多職種で振り返るPreventable Trauma Death検証会を定期主催し、診療の質の向上に努めています。

救急外科

 大腸穿孔、腸管壊死などによる重症敗血症に対しては、外傷診療のDamage Control Surgeryの概念を応用した緊急手術と、Survival Sepsis Campaign Guidelineや日本版敗血症診療ガイドラインに最新のエビデンスを加味して、CHFやPMX-DHPなどの血液浄化療法を含めた集中治療管理を行っています。また、上部消化管出血による出血性ショックに対する緊急内視鏡的止血術、上腸間膜動脈閉塞症や腹部内臓動脈瘤破裂に対するカテーテル治療を含めた集学的治療、急性膵炎に対する集中治療なども幅広く担当しています。

外科的集中治療

 重症外傷、重症敗血症など外科的治療を施した症例においては、そのままAcute Care Surgeonが集中治療を継続します。麻酔科などの他科医師だけではなく、看護師、臨床工学技士、薬剤師、栄養管理士などと連携をとり、少しでも患者様が早期回復できるよう治療方針を組み立てています。

 当センターでは1985年の設立当初より外科専門医が救急科専門医として活動しており、いわば30数年前から”Acute Care Surgery”を実践してきています。3000例を超える豊富な経験と知識を地域の救急医療に役立てるべく、さらなる向上を目指しています。