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カルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)患者多数発生事案の経過について(第2報)

 平成29年11月18日、当センターの複数名の患者様から、カルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)が検出されました。そのため、救急患者の受け入れをすべて一旦停止し、大阪医科大学感染対策室、北摂四医師会感染ネットワーク、そして高槻市保健所のご指導をいただきながら、院内の感染予防策の徹底的な見直し、職員教育の徹底・強化を行ってまいりました。
 同年12月26日、救急患者の受入を一部再開し、徐々に受入拡大を図ってまいりましたが、この間入院中の患者様ならびにご家族の方々に、御心配と御迷惑をおかけしましたことを深くお詫び申し上げます。また、近隣の各関係機関、各消防機関、周辺の二次救急医療機関、救命救急センター、大阪医科大学附属病院の皆様方に、多大な御迷惑をおかけしましたことを重ねてお詫び申し上げます。
  その後、新たなCRE感染は発症せず平成30年7月3日、大阪医科大学感染対策室、北摂四医師会感染症ネットワーク、高槻市保健所の立ち入り調査にて、CRE患者多数発生事案の終息が確認されました。
 以下に今回のCRE患者多数発生事案の経過について報告させていただきます。

【経過】

  1. 平成29年11月18日、3名の入院患者からCRE検出の報告。同日院内感染対策本部を立ち上げ、救急患者の搬入停止と、大阪医科大学感染対策室、北摂四医師会感染ネットワーク、高槻市保健所の協力を得て、CREの検出状況の把握と入院患者全てのアクティブサーベイランス、環境培養を開始しました。11月22日には更に2名の入院患者からCRE検出の報告を受けました。
  2. 環境培養の結果、病棟の壁に備え付けの吸引器スイッチ1ヶ所と、吸引の排液バック内2ヶ所からのみCREが検出されました。
  3. 感染対策を講じながら、12月26日より救急患者を一部受入再開し、同時に新規入院患者全員のアクティブサーベイランスを開始いたしました。
  4. 搬入再開後、入院患者のアクティブサーベイランスを、平成30年1月24日、3月1日、5月9日の計3回実施しましたが、CREは患者から検出されませんでした。また2月1日、搬入再開後の環境培養(計31ヶ所)を実施しましたが、CRE検出はありませんでした。
  5. 2月15日、病院間の患者搬入を再開しました。その後も徐々に救急患者の搬入拡大を図り、現在入院制限は解除となっております。
  6. CREが検出された患者は計5名であり、1名は転院後に判明しております。2名についてはCRE感染症を発症したため、抗生剤治療を行い、全身状態安定したのち転院、他の2名は保菌状態と判断し、転院もしくは退院となっております。

【感染拡大の把握、感染源と経路の特定】

  1. 11月18日~22日の間に計5名の患者からCREが検出されましたが、以後新たなCRE検出患者は現在まで認めておりません。
  2. ICU、一般病棟、救急外来、汚物処理室を中心とする水回り、パソコン等の電子機器、消化管内視鏡やエコーなどの医療機器、患者ベッド周りの吸引、モニターなど、計211箇所の環境培養を施行しました。その結果、HDU(高度治療室)のベッド周りの吸引器1ヶ所と吸引の排液バック内2ヶ所からのみCREが検出されました。
  3. 5名から検出されたCRE遺伝子型は、すべて一致しました。
  4. 全ての患者がICU(集中治療室)を経由していたことから、1名のCRE保菌患者からICU内で他の患者へ交差感染し、さらにHDU(高度治療室)へ転室後に同室で水平伝播した結果、最終的に5名の患者に感染拡大したと考えられました。感染拡大した主たる原因は医療従事者を介しての水平伝搬であり、医療従事者の標準予防策が遵守できていなかったことに加え、環境清掃の徹底が得られていなかったことが課題と考えられました。

【対策】

  1. 感染対策委員を中心に、9チーム(A:教育、評価、モニタリング、B:環境保清、C:マニュアル改訂、D:物品整理、E:入院患者対応、F:サーベイランス、アンケート関連、G:損失、予算、物品、H:CRE患者の治療、I:広報)に分かれ、仕事を分担しながら、全職員で感染対策を徹底的に行いました。
  2. CRE検出患者をコホートした後、専任の看護師を配置しました。病院全体での面会制限と患者家族への予防策の指導も行いました。
  3. 医師、看護師、医療技術者などに対する標準、接触予防策の遵守状況のモニタリングに加え、全職員を対象とした感染勉強会と理解度評価のための3回にわたるアンケート調査、標準予防策のシミュレーションを継続的に施行しました。また、全職員による、iPadアプリを利用した手指消毒のモニタリングを実施し、手指消毒遵守率を毎週各部署にて職員に公表しました。
  4. 汚物処理・清拭・洗浄・処置などの動線と手技を徹底的に見直し、マニュアルを作成しました。また、それぞれにおける標準予防策のPPEをわかりやすく一覧表にして各部署に張り出し、徹底を図りました。
  5. 外部業者(環境保清業者など)の清掃手順やリネン等の洗浄過程、それに伴うPPE着脱の見直し、モニタリング、マニュアルを作成しました。
  6. 患者ベッド回りのワゴン整理と、口腔ケア、吸引等の看護手順の見直し、物品のディスポ化を推進しました。
  7. 汚物室を含む水周り環境の整理とともに、マセレーター(ディスポーザブルパルプ粉砕機)を導入し、尿器・便器・洗面器などの完全ディスポ化と汚物槽の撤廃を行いました。また、リネン類はレンタル委託し、可能な限りディスポ化を進めました(駆血帯、潤滑油、フェイスシールドつきマスクなど)。
  8. 院内マニュアルの徹底的な見直しを行いました。

【第三者機関の調査と評価】

  1. 第1回調査(11月21日):大阪医科大学感染対策室、高槻市保健所より計5名が来院、感染拡大の把握と感染経路、アクティブサーベイランス等についてのご指示と、院内ラウンド後に具体的なご指導をいただきました。
  2. 第2回調査(12月1日):大阪医科大学感染対策室、高槻市保健所、北摂四医師会感染ネットワーク参加病院ICN(感染管理看護師)・ICT(感染対策チーム)より計9名が来院、サーベイランス等についての報告後、院内ラウンドにて具体的なご指導をいただきました。
  3. 第3回調査(12月19日):大阪医科大学感染対策室と高槻市保健所より計6名来院、調査結果の全てと実施中の対策について報告しました。院内ラウンド後に一定の評価を受け、患者受け入れ再開可能との指示をいただきました。
  4. 第4回調査(7月3日):大阪医科大学感染対策室、高槻市保健所、北摂四医師会感染ネットワーク参加病院ICNより計9名が来院、経過報告の後、院内ラウンドが実施されました。いくつかの指摘はあったものの、概ね改善との評価を受け、今回のCRE患者多数発生事案の終息を確認していただきました。

【今後について】

  1. 全職員による継続的な手指消毒モニタリングの実施と集計(毎日)を行い、手指消毒遵守率をさらに上げるための、絶え間ない努力をしてまいります。
  2. 当面すべての新規入院患者へのアクティブサーベイランスを施行します。
  3. 抗菌薬ラウンド(週1回)、環境ラウンド(月1回)を継続していきます。
  4. 今回の事案を私たちの中だけに留めるのではなく、広く世間に公表し、多くの医療施設での感染対策の一助になればと考えています。

今回、当センターがこのような事態となったことを、私たち職員は深く受け止めております。三島地域の救急医療の要として、その役割と信頼回復を目指し、今後二度とこのような事態を招かないよう、病院職員一同、精一杯努力してまいります。引き続きご意見、ご指導のほどよろしくお願い申し上げます。

平成30年7月5日
所長 小畑 仁司