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Vol.17
「74歳、新人!」

2012/03/06

 先日、本当に久しぶりにクラシックのコンサートに出かけた。「リトル・カメリア推薦コンサート」。毎年秋に行われる摂津音楽祭コンクール受賞者によるコンサートである。摂津音楽祭はもう26年もやっているそうだ。隣の市でありながら全く知らなかった。
 今年は親友の娘さんが受賞されたとのことで、チケットをいただき聞きに行くことにした。彼女の演奏は、ご両親の愛情たっぷりに育てられたまっすぐなお人柄そのままに、清楚で、可憐なヴァイオリンだった。素晴らしい演奏であった。そのほかにも17歳女子高生とは思えないくらいの情熱的なヴァイオリン、23歳の若者の卓越した技量に裏打ちされた華麗なラフマニノフ・・・どれも素晴らしい演奏であった。
 元来、音楽コンクールというものは30歳くらいまでの若手演奏家のためのものであるのだが、今回摂津音楽祭では始めて35歳以上の演奏家を対象とした部門を設けたらしい。声楽シニア部門「カンフリエ部門」というのだが、カンフリエとは「木の幹」のことらしい。年輪を重ねた演奏家による演奏、ということだろうか。日本で、あるいは世界を見てもこんな部門があるのは摂津音楽祭しかないらしい。第1回目の今年は全国から13名の応募があった。上は84歳から下は30歳後半まで。審査員の方の話によると、84歳の方の声楽は本当に素晴らしかったとのこと。聞いてみたかった!
 カンフリエ部門金賞受賞者は74歳のテノール歌手。パンフレットによると、彼は10年前までパナソニックに勤務しており、定年退職後本格的に声楽を始めたらしい。最近はボーカルグループを結成して病院や老人介護施設でコンサート活動をしてるそうだ。コンクール応募用紙には「丈夫な声帯と、体格と、体力を授けられた事に感謝する」とあるらしい。実際、舞台に登場した彼は堂々とした体躯で、素晴らしい声量で歌い上げた。特に2曲目の「トウーランドット」は秀逸で、最後は思わず涙があふれてきた。素晴らしい!感動した!
 コンクール応募用紙の「音楽をしていてよかったこと」という問いに彼は、「退職後、音楽が私の居場所になったこと」と書いてあったそうだ。会社勤めの時はおそらくモウレツ社員で会社が居場所だっただろうに、退職後は音楽が居場所となった。素敵だなあ。ふと我が身のことを考えると、僕が仕事を辞めたとき、僕の居場所はあるのだろうか・・・
こぢんまりとしたコンサートであったが、本当に心温まる素晴らしいコンサートであった。