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Vol.23
『圭、why?』

2016/06/07

 錦織圭選手のウインブルドンが終わった。

 自己タイ記録の4回戦で、相手は2年前日本中を熱狂させた全米オープン決勝で対戦したあの因縁のチリッチ。今年の全英オープン、錦織選手は初戦から左脇腹に故障をかかえ、いつもの溌剌さがなかった。大事に大事に試合を進め、要所で素晴らしいショットを相手コートに打ち込み、見た目には好調を維持しているようであった。「冷静に、アグレッシブに!」が今回のテーマだ。しかしベンチに戻ると痛みを飲み込むようにタオルで顔を隠し、そしてまた平然とコートへ戻り闘っていた。痛々しい。それでも3回戦までは難なく勝ち進んだ。
 4回戦では最初から140キロ台のサーブしか打てず、自分のゲームが全くキープ出来ない。それでも時々錦織らしいショットが見られた。観客も錦織選手の悲壮な戦いに息を飲んでいた。いつ止めるのだろう。チャンコーチは棄権しろ!と指示しているが、痛み止めを飲んでまだ試合を続けようとしている。

 圭、なぜまだ続ける? why?

 負けると分かっていても途中で試合を投げ出さないプロとしての意地なのか?シード選手が次々と敗退していく中で第5シード選手という責任からなのか?自分の試合を楽しみに見に来てくれているファンに申し訳ないからか?それがプロなのか?

 色々考えさせられた。これは見ていたすべての人が感じた疑問であったはずだ。試合後、錦織選手はインタビューでこう答えている。「4大大会でなかったら、最初から棄権していた。それくらい痛かった」と。それだけ4大大会は特別な大会なのだろう。またこうも言っている。「痛いながらもショットの感覚は良くて、サーブさえ強く打てればなんとかなると思っていた」と。あれだけ痛かったのに、勝てると思っていたのだ!なんというポジティブな考えの持ち主なのだろう!だからこそ、世界で戦える一握りの人間なのだ。シード選手としての責任とか、ファンの事とか、そんなことよりただ純粋に「まだ勝負出来る」と思っていただけなのだ。「筋肉が切れるまで続けようと思っていた。切れてもそれほど大したことにはならないと医師から言われていた。」とも語った。無茶しているだけではなく、極めて客観的に自分のことも把握していた。

 普段、私たちは様々な周囲の雑音に惑わされ、思惑とは違う仕事をしなくてはならなくなることもあるだろうし、仕事内容を途中で変更せざるをえないこともあるだろう。錦織選手のように、ひたすら勝負に拘り、自分の体調を冷静に把握した上でこの勝負に勝つにはどうすればいいのか、いろんな選択肢から最良のものを選び、実行する! この考えにブレはない。こんな生き方が出来たらかっこいいなあと思う。

 芝のコートを苦手としていた錦織選手。2年連続で途中棄権となり、芝のコートがますます嫌になったのかなと思いきや、「今年は少し芝が好きになりました」とコメントしてコートを去った。最後まで前向きな姿勢であった。素晴らしい精神力だ!

 来年のウインブルドンが本当に楽しみである。