施設データ 2017年

部門紹介

循環器救急

 当センターに搬送される内因性疾患の約三分の一を循環器系疾患が占めています。循環器系疾患の多くは心臓が原因の病気で、緊急の対応が迫られる頻度の高い領域といえます。循環動態や呼吸状態が破綻することが多く様々な疾患の患者さんが搬送されてきますが、ここでは循環器領域における当センターに特徴的な取り組みについて紹介させて頂きます。

①急性冠症候群に対する再灌流時間の短縮

 急性冠症候群は、一刻も早く冠動脈の再灌流させる必要があり近年では主にカテーテル治療による再灌流療法が広く行われています。まさに時間との勝負になる治療で、病院到着から再灌流までの時間を90分以内にすることが推奨されてきました。当センターのような救命救急センターにとって“スピード”は最も要求される要素の一つであり、少し古いデータではありますが平均63分(日勤帯;56分、当直帯;67分)と基準を上回る体制を維持してきました。一方で、病院到着からの時間短縮だけでは限界があるのも事実であり、最近では日本循環器学会ガイドラインでも“first medical contact”すなわち最初の医療従事者(多くは救急隊)の接触から再灌流までが90分以内を治療目標とされています。当センターではドクターカー(特別救急隊)を運用しており、病院到着前に診断・治療を開始し病院内の準備を加速させることで、早い場合では“first medical contact”から60分以内で再灌流を行っています。また、当センターはショック状態で搬送される患者さんも多く、再灌流時間の短縮に加え、機械的サポート(IABP、ECMO等)や低体温療法を状態に応じて組み合わせることでさらなる転帰の改善を目指しています。

②院外心原性心停止に対する社会復帰率の向上

 心停止は最も重篤な病態といえ、当センターには年間約300人の院外心停止の患者さんが搬送されてきます。心臓が止まる原因は様々であり、それぞれによって対応は異なりますが、主に“心原性”心停止に対する取り組みについて紹介させて頂きます。

・ウツタイン様式によるデータ収集*1

 院外心停止に対する取り組みの歴史をさかのぼると、1990年に世界中が同じ様式でデータを集め、同じ条件で比較しようということになりました。これを最初の会議が開催されたノルウェーの修道院の名にちなんで“ウツタイン様式”といいます。そして1996年、このウツタイン様式によるデータ収集が日本で最初に行われたのが、ここ大阪北摂地域でした。その際に中心的役割を果たされたメンバーの一人が当センター前々所長の森田大先生です。現在ではウツタイン様式は総務省が管轄し日本全国で行われるまでになりましたが、その始まりは北摂地域、高槻市だったのです。心停止の中の“心室細動”に対して効果的とされるAED(自動体外式除細動器)が駅に設置されているのをよく目にしますが、ここ高槻市のデータがその根拠の一つになっています。

・ドクターカー(特別救急隊)による取り組み*2,3

 ドクターカーシステムを活かして個々の患者さんへの治療はもちろん、病院の外でどのような治療が有益でかつ実現可能かを検証し、救急救命士さんの処置拡大につなげることも大きな目的としています。

・低体温療法*3

 院外心停止の患者さんに対する治療の目標は“社会復帰”です。当センターでは、心停止による脳へのダメージを少しでも軽減する目的で“低体温療法”を積極的に取り入れており、本邦初の心停止蘇生後の低体温療法に関する多施設研究であるJ-PULSE-Hypo研究にも前副所長の筈井寛先生を中心に参加しました。

・体外循環補助を用いた心肺蘇生;ECPR*4

 救命処置を施行しても心停止が持続する患者に対する最後の手段として、体外循環補助いわゆる人工心肺を使用した心肺蘇生である“ECPR”があり、本邦が世界的にリードしている領域でもあります。当センターでは救急初療室とカテーテル検査室が隣接している特性を活かし、近年はECPRの対象となる院外心停止患者に対して救急車からカテーテル検査室への“直接搬入”を試みており、迅速かつ安全なECPRに取り組んでいます。

*②-1. Muraoka, H, Ohishi Y, Hazui H, Negoro N, Murai M, Kwakami M, Nishihara I, Fukumoto H, Morita M, Hanafusa T: Location of Out-of-Hospital Cardiac Arrests in Takatsuki City— Where Should Automated External Defibrillator Be Placed? Circulation J 2006; 70: 827-831.
*②-2. 筈井寛, 西原功, 村岡英幸, 福田 真樹子, 村井 基修, 大石 泰男, 秋元 寛, 福本 仁志, 森田 大: 救急隊が現場到着時すでに心肺停止状態にあった心原性院外心肺停止症例に対するドクターカーの有用性-高槻市における特別救急隊の試み-. 心臓2006; 38: 610-615.
*②-3. 頭司良介, 筈井寛, 清水木綿, 八木良樹, 後藤拓也, 森敏純, 大石泰男, 秋元寛: 高槻市における院外心停止症例に対する病院前低体温療法の試み. 心臓2015; 47: 315-321.
*②-4. 頭司良介, 筈井寛, 秋田尚毅, 清水木綿, 八木良樹, 森敏純: 初期調律がショック適応波形で来院後も持続した院外心停止に対して体外循環補助を用いたCPR(ECPR)と心停止中からの低体温療法を施行した21例の検討. 心臓2018; 50: 370-379.

文責:頭司