大阪府三島救急医療センター 072-683-9911

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救急勤務医手当導入促進事業開始は救急担当勤務医の確保に繋がるか

大阪府救急医療機関連絡協議会  機関紙 大阪救急2009年5月号 巻頭言より

大阪府三島救急医療センター長  冨士原 彰

 4月25日付紙面に大きく「時間外労働と認定」、「産科医宿直賃金割増」と奈良地裁におる産科医訴訟判決を報じていた。産科医の夜間や土曜休日の宿日直勤務が労働基準法上時間外労働に当たると判断して、奈良県に対し割増賃金の支払いを命じたものである。
紙面から受ける印象は、何を論点に争われたか、その内容は定かではないが、本当に背景にある医師不足、産科を担当する医師、(ここではあえて夜間・休祝日の診療を担当する勤務医という)の悲鳴が届いただろうか。産科診療は他科の医師では代診できず、産科医でなければ勤まらないから激務であるというが、産科医だけでなく、夜間、休・祝日に医療の現場で働くすべての職種の人が使命感にかられて過酷な勤務をしなければならない実態、月5~6回の宿日直勤務、宿直明けに引き続き通常勤務をこなさなければならない等々現状の勤務環境改善に繋がる勤務医の処遇のあり方に警告をならす判決と評価してよいのか疑問を感じる。司法の場に現場の医師が現状の過酷な実態を提起した珍しい事例として、労働基準法の判例から至極当然の判決として評価する声も聞こえるが、労働基準法を遵守するには、現在の3倍の勤務医の確保が必要となる。赤字をかかえる地方自冶体の公立病院をはじめ多くの医療機関からは「これではもたない。医療の崩壊だ」の悲鳴が聞こえてくる。平成21年度予算(20億円)で、夜間・休祝日の救急を担う勤務医の手当を新設(増額)する医療機関に、財政支援をする救急勤務医手当導入促進事業が新設された。さる5月8日に大阪府においても救命救急センター、二次救急医療機関、総合周産期母子医療センター、地域周産期母子医療センターの開設者に対して、補助のあり方について説明会が行われた。しかし、今回の促進事業導入については、その必要性は理解できるとしても、その実効性ははなはだ疑問である。将来にわたって、この事業が継続するものか、その保障すらなく、まず当該医療機関個々の就業規則等の改正をということであるが、来年から補助事業打ち切りとなれば、泣くのは医療施設ということになりかねない。もう少し医療現場の危機の現状をきめ細かく分析したうえ、実施を考えるべきである。
自己を犠牲にして、大阪の救急医療を支え必死に努力している医療機関に対して有効な支援がなされ、確実に勤務医に届くよう願うものであるが、医学生、研修医、若手医師らの勤務に対する意識が、①死がない、②救急がない、③忙しくない勤務である状況では、手当を増額することだけでは、救急を担当する勤務医の確保は難しい。現状にはびこる「我々は○○の専門医で、救急には興味はない。」他人事意識をなくし、今ある医療資源を効率よく活用する新しい医療体制を再構築するときである。