大阪府三島救急医療センター 072-683-9911

BlueBar.gif

BlueBar.gif

自動体外式除細動器を公共の場所に効率的に設置するための提案

森田 大 救命名誉所長

【はじめに】病院外心停止の中でも、もっとも救命率が高く社会復帰が期待される目撃された心原性VF例に対し、救急救命士による包括的指示下での除細動が実施されるようになり、それまでの医師の具体的指示による除細動実施に比べ、患者接触から除細動実施までの時間が短縮された。しかし、救急救命士が覚知から患者接触まで平均6分を要する現状を鑑みると救命率の大幅な改善も限界があることが予想される。そのため欧米の救急システムと歩調を合わせ、一般市民を対象としたAED の使用に積極的に取り組むことが勧奨されている。病院外心停止の発生状況を地域ごとに調査することは、今後、AEDの普及促進に伴い、設置場所の優先度を適切に決定するうえで意義のあるものと考えられる。

【対象と方法】平成11年から15年までの5年間に高槻市内(市域面積105km2 居住人口約36万人)で発生し、蘇生対象として救急隊により救急医療機関へ搬送したすべての病院外心停止例を発生場所ごとに分類した。発生場所の分類は、消防庁長官通知の救急事故等報告要領の大分類にもとづいて、住宅、公衆出入場所、仕事場、道路、その他に分けた。小分類で心停止例のない施設は分析から省略したが、参考として救急車内心停止発生数を加えた。世帯数ならびに施設数は毎年実数を調査し、5年間の総施設数から1施設あたりの平均発生頻度を算出した。

【結果】高槻市における過去5年間の発生場所別心停止例及び発生場所別施設総数を表1に示す。病院外心停止例が発生する場所は、住宅が758症例で心停止全体の78.1%と最も多くを占めた。ついで公衆出入の場所116症例で11.9%、道路58症例で6.0%であった(図1)。心停止発生数を施設(世帯)総数で除した数値を見ると、駅構内が最も高く年間1施設あたり0.3200、ついで老人ホーム0.0994、運動場・競技場0.0952となり、住宅は世帯数が多いことから発生頻度は0.0011であった(図2)。山林・原野に分類されているゴルフ場における心停止発生数は2症例、施設総数は15となり、1施設当たりの発生頻度は 0.1333となった。また、公衆出入の場所に含まれる病院、診療所などの医療施設での心停止も少なくなく、病院等から救急要請している実態が明らかとなった。

【考察】高槻市における病院外心停止発生頻度の高い施設は駅構内、ついでゴルフ場、老人ホーム、運動場・競技場の順であった。Cobbらのグループによる研究では、施設毎の平均年間発生率が0.03以上は心停止発生率の高い施設、0.01以下は低い施設としている。このことから、発生率の高い施設へ優先的にAED設置を働きかける必要がある。興味深いのは射幸心をそそるパチンコ店は、分類上遊技場に含まれ、救急要請は多いものの心停止例は発生していなかった。一方、病院からの要請による救急搬送の心停止例については、当地域の特徴として精神科系の医療施設が多かった。

 住宅においては、通院病院の医師に働きかけ突然死リスクの高い傷病者を選別してもらい、自宅でのAED設置を促す必要性が示唆された。

 本研究結果は施設運営の危機管理の観点からAEDを積極的に設置する施設を決める際の参考資料になりうる。

【結論】病院外心停止は自宅での発生数は多いものの、施設(世帯)数を考慮すると発生頻度は低く、公共の施設としては駅構内での発生頻度が最も高かった。

【文献】
1)橋本泰広、他:高槻市における病院外心停止の発生状況.プレホスピタル・ケア 18:3035、2005.
hyouichi.jpg
image19.gif
image2.gif

地域における疫学調査を踏まえ、公共の場所としては、駅構内、ゴルフ場、老人ホーム、競技場への設置を当面優先すべきである。



自動体外式除細動器設置が望ましい施設・場所

  • 救急隊通報不可能な場所:航空機、船舶
  • 心停止が発生しやすい場所:疫学調査
  • 安全確保が求められている場所:学校、スポーツ関連施設
  • 心臓病患者宅:購入希望者

自動体外式除細動器設置を義務づける施設・場所

  • 医療施設
  • 航空機、船舶
  • 空港、駅
  • 学校
  • スポーツ施設
  • 人口密集施設